鹿児島県立大島病院のホームページをご覧いただきありがとうございます。
院内でのマスク着用は引き続き求められているものの、世の中ではマスクなしの日常生活が戻ってきており、COVID-19の影響はほぼ収束したと考えてもよさそうです。今回パンデミックを起こしたCOVID-19は、SARS2と呼称されているようで、2002年に発症した中東呼吸器症候群(MERS)や2016年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、いずれも致死的なコロナウィルスの変異種でしたが、おそらく次のパンデミックも変異型のコロナウィルスで引き起こされる可能性が高く、その発生間隔が次第に短くなってきているのが不気味です。いずれにしても新たに起こりえるパンデミックにむけての感染症病床の確保や診療体制を万全にしておく必要があります。
さて急性期医療に携わっている当院ですが、地域における医療の集約化はますます進み、医療提供体制はより強化されてきています。脳血管障害、心筋梗塞・狭心症、交通外傷、あるいは急性腹症など、早期に適切な治療の介入が可能となり、救命率の向上のみならず後遺症なく社会復帰できるようになりました。各診療科のマンパワーを当院に置きながら、7名の救急科の医師が24時間体制で救急外来と救命センターで対応しております。離島にあってドクターヘリというツールを活用しながら地域格差のない標準治療を行えるようになりました。
また、本年度から呼吸器外科が新設されました。肺がんの手術に加えて高精度の放射線治療や免疫化学療法などの組み合わせにより肺癌の集学的治療が一貫して行える環境が整ったことは地域の住民にとって大きな福音といえます。
令和6年度の鹿児島県県立病院プログラムで11名の先生方が臨床研修を開始されました。このプログラムでは救急患者さんを指導医のもとファーストタッチで診療できるという特徴がありますが、全員モチベーションの高い医師ばかりです。2年間の研修のあかつきには専門医として戻ってこられ、へき地、離島医療に貢献していただけるものと期待しています。
急性期医療については鹿児島本土の医療機関と遜色ない治療が可能となっているものの、回復期や慢性期につながる医療ネットワークが追い付いていない感があります。このまま急性期病院として当院が存続できるのか、どうか、難しいかじ取りが迫られています。
地域を支える開業医の高齢化や後継者不足が深刻で、ここ数年で10近い診療所が閉院や入院施設の縮小がありました。また、急性期疾患治療後の社会復帰に向けての十分なリハビリテーションなどの機能が十分でないなどポストアキュートのケアについては他の医療圏から明らかに劣っています。
地域医療構想調整会議などで10年後、20年後の奄美医療圏の姿を見据えて話し合われますが、医療機関が別々のベクトルで動いているようで考えがまとまらず将来の奄美医療圏の在り方が心配されます。
2020年秋には第1回の県病院祭りを開催し、地域住民の方に多数参加いただき、盛会となりましたが、ここ数年はコロナ禍で交流の場が途絶えております。病院祭りなど住民の皆様方に当院を知っていただく機会を設けることは重要と考えております。奄美地域における公立病院として安心安全で質の高い医療を提供につとめ,皆様に信頼される病院を目指してまいります。令和6年も鹿児島県立大島病院をよろしくお願い致します。
令和 6年 4 月 1 日
院長 石神 純也